京極高次の略歴と予備知識
運命に選ばれたマイナー武将・京極高次
戦国時代の武将としてはかなりマイナーな京極高次ですが、この人ほどに家族に恵まれて出世したケースもなかなかないと思います。あやうく処罰されそうなところを妹のお陰で乗り切り、そして嫁のお陰で大名になった経緯を思えば、「出世するために実力は必要か？」なんて疑問が湧いてきてしまいます。
もちろん京極高次にもそれなりの気品と能力もあったでしょうし、だからこそ落ちぶれていた京極氏を再興できたのでしょう。「運も実力の内」を地でいきながらまんまと成功を収める、それは運命に選ばれた人間だけが成し得る偉業なのかもしれませんね。
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浅井氏に下剋上された京極氏
そもそも京極氏がどんなもんかと言えば、鎌倉時代の近江国（滋賀県）守護・佐々木氏から分かれた一族なのですが、まあ要するに源氏の名門家系ということです。その繁栄っぷりは室町時代も継続しており、北近江だけでなく出雲国（島根県東部）の守護も兼任し、出雲に残った同族達は尼子氏を名乗って大勢力を築き上げています。
ですが応仁の乱が始まった頃から様子が一変、浅井亮政（すけまさ、浅井長政のお祖父ちゃん）に家督争いの隙をつかれ、北近江の支配権をガッツリ奪われてしまいました。京極高次はそんな京極氏不遇の時代に生まれ、京都上洛を果たした織田信長に人質として送られるところからその人生が始まります。
織田信長の京都上洛戦についてはこちらから。
京極高次の正室となった浅井三姉妹の次女・お初
浅井三姉妹とは北近江の戦国大名・浅井長政、そして織田信長の妹・お市の間に生まれた3人の娘を指します。長女の茶々は豊臣秀吉の側室、また3女の江与は江戸幕府の2代将軍・徳川秀忠の正室としてプチ有名ですが、その間の2女・お初が京極高次の正室となった女性です。
まあ長女と3女の旦那が持つインパクトに比べれば、残念ながら2女の旦那にはかなりの格下感が漂います。とは言え、嫁の縁をたぐって出世したことを考えれば、世渡り上手な点ではむしろ格上なのかもしれません。
京極高次の妹・京極竜子
この名前からはいかにもゴツそうな印象を受けますが、京極竜子は世間で噂になる程の美貌を持っていたそうです。美男で有名な浅井長政を叔父に持ち、美人揃いの浅井三姉妹もイトコということで、まあシンプルに美形の家系だったのかなと思います。
京極竜子は若狭国（わかさのくに、福井県南部）の守護大名・武田元明の元に嫁入りしていましたが、この武将は本能寺の変後に明智光秀の陣営に入り、その後羽柴秀吉に敗北し処罰されてしまいました。しかし、ここで美人大好きな羽柴秀吉の悪いクセが発揮され、京極竜子は秀吉の側室として第2の人生をスタートさせることになります。
女グセの悪さを含む豊臣秀吉のエピソードはこちらから。
京極高次の生涯
織田信長に人質としてとられる
1563年、京極高吉とその妻・マリア（洗礼名）の間に京極高次は生まれました。しかし、この頃の京極氏は元配下だった浅井氏に従属しており、すでに近江国の一地方領主くらいの立ち位置でしかありません。
その後織田信長が京都上洛に成功すると、京極高吉は織田家への従属を示すために京極高次を人質として送り付けました。それから程なくして京極高吉が病に倒れてしまったため、京極高次はなんとなく成り行きで織田家の家臣として働くことになります。
明智光秀と共に戦った山崎の戦い
京極高次がちょうど20歳になった頃、京都で本能寺の変という大事件が起きました。この時羽柴秀吉は中国地方で毛利家と戦っていましたが、知らせを聞くなり爆速で京都へ帰還、そして明智光秀との「山崎の戦い」に臨むことになります。
この時の京極高次は妹の旦那・武田元明と行動を共にしており、一緒に明智光秀の陣営に入って羽柴軍と戦うこととなりました。しかし蓋を開けてみれば明智光秀は見事に惨敗、京極高次はなんとか逃げ延びたものの、妹婿の武田元明はすぐに捕縛されて処罰されています。
柴田勝家に匿ってもらうも
ここで羽柴軍に追われるお尋ね者になった京極高次でしたが、逃げ回っているうちに清州会議が開催され、色々あって柴田勝家がお市の方を正室として迎えることとなりました。お市の元旦那・浅井長政は京極高次の叔父に当たりますので、京極高次はこの微妙な縁を頼って柴田勝家の元に身を寄せています。
織田信長没後の後継を決めた清州会議についてはこちらから。
しかし、その後すぐに賤ヶ岳の戦いが起きて柴田軍は敗北、柴田勝家とお市の方は城に火を放って2人で自害してしまいました。ここで取り残された京極高次はついに羽柴秀吉に投降し、震えながら処分を待つこととなります。
妹・京極竜子の嘆願で命拾い
山崎の戦いで旦那を失った京極竜子でしたが、美人に目がない羽柴秀吉から猛アタックを受け、この頃には嫁入りも済ませて側室となっています。そんな折に兄である京極高次に処罰が下るとの噂を聞き、京極竜子は夫である羽柴秀吉へ必死に泣きつきました。
この時の羽柴秀吉は織田信長が持っていた利権をゴッソリ引き継いでおり、実質的には日本の覇者と言える立ち位置です。まあそんな羽柴秀吉が京極高次なんかにムキになる訳もなく、またもらったばかりの美人嫁・京極竜子からのお願いもあり、割とあっさりお咎めなしになっています。
浅井茶々の妹・お初を正室に
妹のお陰でなんとか生き延びた京極高次でしたが、その経緯の割には羽柴秀吉にそこそこ気に入られたようで、配下として領土をもらうことになりました。それからもさしたる功績もないのに領土をプラスされていますので、これはまさに親ならぬ妹の七光りと言っても過言ではないでしょう。
その後豊臣秀吉の思い付きにより（このころ豊臣姓を取得）、京極高次は豊臣家で預かっていた浅井三姉妹の2女・お初を正室に迎えることとなりました。そしてその翌年、豊臣秀吉が三姉妹の長女・茶々を側室に迎えたのですが、このことによって京極高次は日本随一の権力者と義理の兄弟になってしまった訳です。
出世街道まっしぐらの京極高次
その後の京極高次は九州征伐・小田原征伐でも功績を挙げたとされ、加増に次ぐ加増であっさり石高が1万石を越え、気付けば大名の身分にノシ上がりました。とは言え、上記の2戦で京極高次が活躍した記録なんか全然ないので、出世させるための口実だった感がかなり濃厚です。
そして京極高次は豊臣ファミリーの証である豊臣姓を授与され、さらに琵琶湖と京都の間にある大津城の城主という重要ポストを与えられました。他にも公家の官位をもらったりだの優遇が続いていますが、もちろんその間も大した功績もなさそうなので、やはり嫁さんの存在があったからこその出世だったものと思われます。
ヒガミが生んだ嫌なあだ名「蛍大名」
しかし、このあまりにトントン拍子な出世に対し、他の武将達は静かに嫉妬の炎を燃やしていたようです。そんな京極高次がつけられたあだ名はなんと「蛍大名」、これは要するに「妹や嫁さんの七光りで出世できてよかったね（冷笑）」くらいの意味でしょう。
まあ行政に携わっている文官タイプであればまだしも、戦場でひたすら体を張り続ける武将達にとっては納得いかなかったのかもしれませんね。ところが朝鮮出兵の最中に豊臣秀吉が病で倒れると、色々思うところがあったのか、京極高次は徳川家康と急接近し始めます。
関ヶ原の戦いと京極高次
西軍に所属したフリして東軍に
天下統一を果たした豊臣秀吉が没した後、五奉行・石田三成と五大老筆頭・徳川家康の間に険悪なムードが漂い始めました。そして両者はそれぞれ味方を集め、石田三成が西軍、徳川家康が東軍を組織し、着々と戦いの準備を始めました。
この時の京極高次は徳川家康の東軍に味方したかったのですが、悲しいことに本拠の大津城は西軍陣営のど真ん中です。そのため京極高次は表向き西軍に付くという腹芸を見せながら、着々と開戦の日に向けて軍備を整えました。
大軍の足止めに成功した京極高次
関ヶ原の戦いが始まる二週間程前、京極高次はついに西軍への敵対姿勢を示しましたが、もちろん西軍は激怒して大津城への攻撃を始めました。この戦いでは大津城3000人に対して1万を越す大軍が襲来、しかも猛将で鳴らした立花宗茂も攻め手に加わっていたのですが、蛍大名と言われた京極高次もここでは意外な奮戦を見せています。
しかしさすがに多勢に無勢ということで耐えきれず、1602年の9月15日、京極高次はついに降伏し大津城は開城することになりました。ところが、この日のうちに関ケ原の戦い本戦が始まってしまったため、大津城を攻めていた西軍は現地に辿り着くことなく終戦を迎えています。
気付けばヒーローの一人に
関ヶ原の戦いを経て天下人の地位に立った徳川家康でしたが、彼は大津城で奮闘した京極高次を高く評価しました。1万を越す西軍の大軍を関ケ原本戦に参加させなかったこと、しかも厄介な立花宗茂をキッチリ足止めした訳で、これは最終的に降伏したにしても十分にお釣りがくる大功と言えるでしょう。
ということで、京極高次は戦後の報奨でも大きく加増され、若狭国をまるまる領有することとなりました。その後は代を重ねるうちにスッタモンダありましたが、結局京極高次の家系は無事に明治維新まで藩主の座を守り通しています。
京極高次の記事まとめ
今回ご紹介した京極高次という戦国武将ですが、実はこの人、戦場で活躍した記録は関ヶ原の戦いだけだったりします。とは言え、大津城での足止めは兵数的にも地理的にも高難度だったハズなので、「ひょっとしたら名将なのでは？」疑惑もあったりします。
よくよく考えれば、名将コレクターでお馴染みの羽柴秀吉に気に入られるくらいですので、実はかなりのキレ者だったとしても不思議ではありません。むしろキレ者だったからこそ、わざわざ目立とうとせずに妹や嫁さんを立てたのかもしれませんね。
とまあ筆者の妄想はこの辺までにして、ここまで読んでいただけたこと、心より感謝いたします。
ちなみに、ChatGPTで京極高次のことを調べた結果についてのしょうもない記事はこちらから！
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