天皇とは現代にまで続く神々の子孫

令和元年5月一日の皇居正門前 用語集

天皇とは

西暦400頃のヤマト王権期から現代に至るまで、時代によって役目を替えながらも日本のシンボルとなってきた歴代の人物を指します。2021年5月現在の日本国憲法では、天皇は日本を統括する元首ではなく、国民統合の象徴的存在として位置づけられています。

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天皇家の歴史

大王(おおきみ)と呼ばれた時代から

現在の呼び名になったのは奈良時代初期からであり、ヤマト王権など古代では「大王(おおきみ)」という名称で呼ばれていました。壬申の乱で勝利した天武天皇は他者を寄せ付けない圧倒的な権力を持っていたため、「これまでの大王とは違うぞ」という意味を込めて天皇という名称を使い始めています。天武としては自身1代限りの名称のつもりだったという説もありますが、結果としてこの名称は令和の世まで使われています。初代となる「神武天皇」からにも天皇という名称が使われていますが、この名前は「諡(おくりな、すでになくなっている人物に贈られる称号)」として後の世に名付けられています。

神武天皇陵の石碑
神武天皇陵

ちなみに第二次世界大戦の前、日本の国名が「大日本帝国」だった頃には、皇帝という呼び名も使用されていました。「皇帝が支配する国=帝国」であるため全く間違ってはいないのですが、現代の日本人として考えると若干違和感のある呼び名でもありますね。

神々の子孫たる天皇家

皇室の系図
(wikipedia皇室の系図一覧より転載)

初代天皇となる神武天皇から数えて、2021年現在の令和天皇は第126代目にあたります。天皇家の系譜は日本神話の最高神となる天照皇大神(あまてらすおおみかみ)から始まっており、日本神話の神々も実在したという説もあるためか、割と自然な感じで神武天皇から後の時代に繋がっています。

ちなみに宮内省が出している系図ではさすがに神話上の人物を載っておらず、神武天皇を初代としています。

出典:宮内省ホームページ(https://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/keizu.html)

皇位継承は三種の神器を用いて

三種の神器のイラスト
※三種の神器は非公開のためイメージイラストです

新たな天皇が皇位に即位する際には、三種の神器を継承する儀式から始まります。三種の神器とは天照皇大神から天皇家の先祖となるニニギが受け取った3つの宝物を指し、これを所持することは正統な天皇である証となります。神が宿るとされる3つの宝物を継承することで、天照皇大神を始めとした神々に認められる天皇になるという儀式ですね。

実物は伊勢神宮や熱田神宮の御神体となっているため、儀式には「形代(かたしろ)」と呼ばれる代理品を使いますが、これも神聖な儀式を通して作り上げられた由緒正しい品物となっています。ちなみに八尺瓊勾玉だけは天皇家が保有しており、実物をそのまま使っているようです。

日本史では多くの例はありませんが、同時に複数の天皇が存在した場合には三種の神器を持っている側が正統とみなされることになります。鎌倉時代初期の安徳天皇と後鳥羽天皇や、室町時代初期の南北朝時代では、三種の神器を持っていた安徳天皇や南朝側が日本史では正統とされています。

室町時代初期の南北朝の動乱「観応の擾乱」についてはこちらからどうぞ。

三種の神器は「八咫鏡(やたのかがみ)」、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、「天叢雲剣(あまのむらくも、草薙剣とも言います)」の3つとなります。八咫鏡と八尺瓊勾玉は古代より継承され続けていますが、実は天叢雲剣の形代だけは源平合戦の折に消失しています。最終戦となった壇ノ浦の戦いで、当時まだ幼少だった安徳天皇もろとも海に沈んでおり、そのまま引き上げられることはありませんでした。その後伊勢神宮から宝剣の奉納があったため、その宝剣を新たに天叢雲剣として扱うようになったという経緯があります。

天皇家は姓を持ちません

2021年5月現在に在位されている令和天皇の名前は、「浩宮徳仁」様です。ですが本来は「徳仁」という下の部分しか持っておらず、姓にあたる「浩宮」の部分は「御称号」という、一部の皇族だけが持つ呼び名です。そうなると「では天皇家の姓は?」という問いが頭をよぎりますが、見出しにもある通り実際に「天皇家には姓がない」んです。

皆さんが仕事に就こうとした場合に、自分自身のことを相手に知ってもらうために履歴書や職歴書を用意することと思います。古代の貴族や一般人も同様に相手に自分の素性を伝え、いかに信用できる人間かをアピールする必要がありました。そういったケースで身内に有名な人物がいる場合には、氏族名や苗字を名乗るだけで「あの有名な〇〇と血縁関係にある者です」、という自己紹介をしたことになります。血縁が重視されていた古代や中世の日本社会では、氏族や苗字が手っ取り早い名刺の役割を果たしていました。

ですが天皇は唯一無二の絶対的存在であり、国中の全員が知っていて当たり前です。自己紹介をする必要どころか、信用してもらう必要すらありません。そのため天皇は、相手に対して自分のルーツを明らかにするための姓を持つ必要がないんです。このことは中国の各王朝の皇帝や王族についても同様に姓を持たないため、やはり輸入された考え方なのかもしれません。



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