旗本とは主君の親衛隊を任されたエリート武士です

宇喜多秀家の軍旗「児文字」 用語集

旗本とは

この旗本という単語は時代によって意味合いが変わっていますが、鎌倉時代以降のいわゆる武士の時代においては、戦場で主君の旗を守る部隊を指します。主君の旗を守るということは、旗の近くにいるはずの主君も同時に守ることになるため、つまり主君に危険が及ばないよう護衛し続ける親衛隊のような役割となります。

また、敵からの攻撃だけでなく味方の裏切り、そして戦場のドサクサに紛れた奇襲や刺客にも対応する必要があるということで、旗本には基本的に能力と忠誠心が高いエリートが選ばれていました。

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出世の近道となった旗本

旗本は主君の命を守る最後の防波堤であり、部隊間の伝達という重要な役割を担うため、当然ながら誰でもなれる訳ではありません。襲撃があった際に主君をきっちり守れる戦闘力と判断力、そして何よりも主君のために命を投げ出す覚悟が必要とされていました。また主君からしても自身の命を預けることになる訳で、そんな重要な役割をどこの馬の骨とも知れない人間に任せる訳にもいきません。ということで旗本には代を重ねて仕えた譜代の家臣が圧倒的に多く、また長く一緒に時間を過ごすことが多いため、主君の「お気に入り」が任命されていたようです。

そんな「お気に入り」の家臣がちょっと手柄を立てれば、出世させたくなるのが人情というものですよね。多くの人間を束ねる主君とは言え人の子ですし、えこひいきはいけない、とか思っていてもやはり出てしまうのが人間でしょう。という訳で旗本という身分から出世に繋がったケースは非常に多く、例えば徳川四天王と呼ばれる本多忠勝や榊原康政、井伊直政も、全員旗本を経由して最終的に大出世を果たしています。もちろん本人の努力あってのことでしょうが、旗本というポジションが主君の好感度を上げやすかったことも確かでしょう。逆に主君からすれば、なんとなく出世させたい人物がいたら旗本に任命し、「ちょっと手柄を立てさせる→メッチャ褒めて出世させる」パターンもあったようです。

織田信長の軍制における旗本は母衣衆

戦国時代は大名家によってそれぞれ軍制が異なるため、「旗本」が勢力ごとに別の呼称で表されていたりします。尾張国(愛知県北部)の織田家での「旗本」は「母衣(ほろ)衆」と呼ばれ、さらに「黒母衣衆」と「赤母衣衆」に分かれて編成されていました。母衣とは高位の武士が背負う、籠に布をかぶせたよく分からない物体なのですが、織田信長はこの母衣を背負った母衣衆を自身の警護や伝令として用いていました。

母衣武者の日本画
背後からの矢を防ぐため?の母衣

織田家の母衣衆は他家と同様に出世の足掛かりとなっていたようで、後に一軍の将となった人物を多数輩出しています。豊臣政権五大老にまでなった前田利家や甲州征伐後に信濃国・甲斐国を統治した河尻秀隆、今川義元を討ち取った毛利新介や佐々成政・塙直政・蜂屋頼隆など、ちらほらと名前を見かけるメンツが揃っていたりします。特に能力が高いエリート侍が選抜されていた母衣衆ということで、後に出世しているのは当然と言えば当然なのかもしれませんが、それでも20数人の母衣衆からこれだけの数が後世にまで名が残っているのは「凄い」の一言ですね。

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江戸時代の旗本は「殿様」と呼ばれます

時は下って江戸時代に入ると、幕府によってガチガチの管理体制が敷かれたことで、「旗本」は階級身分の一つに落ち着きました。所領の石高が1万石以上だと大名と呼ばれますが、一万石未満の幕府直轄の武士は「旗本」と呼ばれ、いざ幕府が軍を動かすことになれば一部隊長として出陣することになります。つまり江戸時代の旗本は、エリート揃いの親衛隊だった戦国時代とは異なり、幕府直轄のちょっと上級兵くらいを指していました。

ちなみに時代劇でちょこちょこ耳にする「お殿様」という表現は、江戸時代ではこの旗本格の人に対して使用されていたようです。江戸時代では大体5000人くらいの旗本がいたそうなのですが、つまり5000人も「お殿様」と呼ばれていた人がいた訳ですね。

もちろん同じ旗本と言っても格差は大きく、年の俸給米が100石程度の者が大半ですが、5000石も取っているリッチな家も存在していました。そういった高給取りの旗本は「大身旗本」と呼ばれていましたが、特に儀礼を司る家は「高家(こうけ)」と呼ばれ、場合によっては10万石くらいの大名と同じ官位を授与されたこともあったそうです。ちなみに年末特番で有名な忠臣蔵で、浅野内匠頭に江戸城で斬られてしまった吉良上野介も「高家」に属する旗本でした。浅野内匠頭は5万石の赤穂藩藩主ではあるのですが、番組は浅野内匠頭が吉良上野介にペコペコしている場面から始まる事が多く、いかに高家の旗本が権力を持っていたかが分かる場面だったりします。

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